罪滅し編終了&ネタバレ感想。


ネタバレですよ。気をつけてくださいね。


 意見が分かれる作品だとは聞いていましたが……これは確かに、ねぇ(苦笑 別れる部分も色々ありそうですけどね。多分ネックとなるのは、ループ説が濃厚になりオカルト要素が強くなった事と、種明かしが納得できるシロモンじゃない、ってあたりじゃないでしょうか。対してプラス要素はエンタメ性&物語性が強い事、という感想が多いようです。
 さてさて私としてはどうだったかと言いますと……ごめんなさい、ビミョーw
 ミステリとしての立場があやふやになっていること自体はいいんです。オカルトならオカルトで楽しむ心積もりを作れば良いし。それでもやっていけるだけ、キャラに対する愛着は育っております。ただですねー……物語重視になればなるほど、作者の文章能力が気になってきちゃうんですよorz
 三人称での視点のぶれとか、同じ描写(台詞)の繰り返しとか、構成の無駄とか、展開の強引さとか……展開の強引さや繰り返し描写は以前からのものですけど、それは「違う視点から見るとまったく別の物語になるミステリ」って思って読むと、推理を交えてワクワク楽しめるのですよ。でも推理部分取っ払っちゃうと、どうしても稚拙さが……値段を考えればありえないくらい良作なのは分かっております。それでも、今回ちょっぴし幻滅してしまったのは確かなのです。最初っから「ただのオカルトノベル」だったら間違いなくここまでプレイしてないってのがあるからなんですけどね。追加されたバトル要素は、最後の冗長決戦がなければそこそこ楽しめたかなあ。


 ただ、希望はあるのです。それは罪滅し編が今までに無い事をいろいろ試している作品であると言う事です。まだ試行錯誤の途中にある感じがするので、次回作はもっと面白くなるに違いない!と期待している自分がいます。ちなみに罪滅し編梨花分が大幅に補給されてるあたりが非常に良かったですw あと、全国100万の熊谷ファンが大喜び間違いなし。立ち絵実装希望!


 では気になるポイントについて触れていきますか。
 突っ込みに関しては、トリック・謎部分はいれてもつまらなくなるだけなので、物語部分にだけ。


レナの中身と最後の決着の甘さ
 正直ドン引き(iii´Д`) 口直しに鬼隠し編のレナ視点を見せて欲しいorz ぶっちゃけ、ここまで精神に疾患のある方と付き合うというのは物凄くエネルギーのいることです。ともあれば自分が飲み込まれかねないし、そんな危険性と戦いながらもその人のために人生投げる覚悟が必要です。(たとえば介護系でしっかり考えなければいけないのは患者本人のケアは勿論、介護している方が先に参る可能性があるので、適切な距離を取らせてやらないといけないということです) ……で、確かに仲間である圭一達は問題ないかもしれないけど、一読者にしか過ぎない私は普通に引くしかないです(ノД`)
 語られた主題である「過ちは繰り返さないと誓うことで許される」「秘密は持っててもいい」「人は成長するのだから、過去にとらわれてはいけない」という論理からレナは最後許しを得ます。
 ハイ、納得いきませんwwww
 というのも、人の成長は「螺旋」であるからです。右肩上がりの線グラフではありません。精神的に参ってしまった人が浮上するまでのプロセスは、上がり下がりを繰り返しながら徐々に上を向いていくというものです。同じ事を繰り返しながら少しずつ次元を上げていく「螺旋」です。ここで大事なのは「ほぼ間違いなく同じ事を繰り返す」ということ。ここで対処を間違えたり、運が悪かったりすると、また落っこちます。圭一は「過ちを二度と繰り返さなければいいじゃないか」で思考がストップしており、「今回さえどうにかできれば、もうレナは大丈夫」と思い込んでいます。(魅音は治療を受けさせると言ってるからわからんけど。梨花はループによる) レナを信じるのは構いませんが、楽観視しすぎです。その姿勢がどうしても納得できない(年齢考えれば仕方ないけどね) 読者視点から見ると、レナは罪滅し編で3度暴走しました。圭一視点では過去の事件を知らないから二度。でも、決定的な二度だった。レナに心の傷が深いことはよく分かっていたはず。なのに「相手の過去がどんなものでも、俺たちと一緒にいた相手がいいヤツならそれでいい」論理を適用してる。無理です。なぜなら、気の触れたレナは「過去」のものじゃなくて「現在抱えている病気」なのだから。圭一達と一緒にいたレナが「あるべき姿」だと断じるのは、大変おこがましいことです。言葉のあやだと思うんだけど、「日常が本来の姿」って何度も強調されるのがほんとうに気に入らなかった。
 重ね重ね言いますが、心の病は複雑です。異常なのは異常として認識できる。では、誰がその人の「正常」を判断するのでしょう? いわゆる多重人格の治療でもあることですが、「罹患前」と「罹患中」と「治療後」の人格は一致しないことが通常です。つまり「元の性格」に戻る保証はない。むしろ内面での統合や安定化を図る結果、以前の性格とは別のものになることが多いのです。だって、前の性格だと耐えられなかったから病気になるんだもん。つまり「元の性格」は「正常」の基準にならんっつーことです。なので安易に「今までのレナに戻れる」って言うのがどうしても……言っても良いけど、自覚してるように見えない。
 圭一達は「また日常に戻る」を至上命題にしているので、レナにも「本当のお前はこうなんだ。日常のお前に帰れるんだ」というスタンス。本当に考えるべきは「これから先どんなに変わったとしても、仲間でありつづける努力を惜しまない。俺たちも変わっていく」ということでしょう。まー、内容的にはこういうこと言いたかったのかもしれないですけどね。日常日常強調しすぎて、こーは読み取れませんでした。
 あと教室のガキども、ガソリンぶっかけられたのにあっさり和解しすぎwwwwこの辺の雰囲気が、テーマの重要さを貶めてると思うんだけど。


圭一の主人公復権
 どうだろう。いつもの思い込み激しい圭一だと思いました。圭一の美点である「超☆純粋な好意と信頼」は、救い様の無い欠点でもあります。ダブルスタンダードを生み出しまくりだからです。ってかダブスタによる問題の発生と解決ってのはひぐらしのテーマかもしれんね。自分と他人は違う事を受容しないと先に進めないっつー。
 ただ、圭一には手放しで誉められるところが一つあります。ズバリ人徳ですね。圭一は何か間違えようとしても止めてくれる仲間がいる。それは圭一が、間違えようとした仲間を止める事ができる人間だからなんでしょうね。「仲間と隠し事」のエピソードはとてもよかった。鬼隠しの時から「仲間」に過剰な期待を持っている圭一が心配だったけど、きちんと消化してくれて嬉しかったです。もっとも、そこまで圭一が部活の仲間を求めるからこそ、仲間も慕ってくれてるでしょうけど。あとは「悪い事をして手に入れた平穏は続かないように出来ている」ってのも普通に名言だと思いました。
 ……でも、大団円には後一歩足りない気がする。今回のはダムに蟻のはいでる穴があけられることを知ったってだけで、実際に穴をあけるには今の論理ではダメな気がする。予感ですけど。


梨花&圭一ループ
 気に入らないけど、ありな事はありかなぁと思います。ループしててもミステリ部には影響しないし(ループが殺人の動機ですとかいったらちょっと萎えるが) というのも、今回で描写された梨花の心情が、感情移入しやすいものだったから。圭一はダメ。ちょっと肌に合わない。ぶっちゃけ「確実に人を殺した記憶」を持ってたらあんなふうに「次はさせない!」って前向きにならないよ。「そんな夢を見た気がする。夢の中でもあんな嫌な思いをして、後悔したんだ。絶対に現実では同じ轍を踏まないぞ」ならいいけど、圭一は「記憶」として認識しちゃいました。
 現実として認識しているなら……どんなに今の世界で頑張っても、死んじゃったほうの魅音やレナに謝罪は伝わらない。助かるのは現実のレナと魅音だけ……というのを理解しちゃうと思うんですよね。目の前のレナを助けようと思うこと自体はいいけど「二度と繰り返しさえしなければいい」って考え方はすっげーありえないと思います。梨花の場合は「最後に望む世界が手に入ればどーでもいいや」って達観してるのでヒジョーに分かり易い。
 あ、この「二度とやらなければいいよ」は作品全体で繰り返されてますが、気に入りません。後述。
 ちなみに私は今も尚「ループ実在しない」説も信じています。
 実在したとしても、圭一の記憶は当てにしていません。
 ぶっちゃけ、圭一がいつも通りの圭一だったので、都合よく記憶を脳内変換してる可能性は高いのです。


日常原理主義と悟史の悲哀
 あんまりにもあんまりな「日常を取り返す!」描写のせいで、実はあれは成長物語でなく、「日常」という幻影に取り付かれた滑稽な人間たちを笑う作品なのではと邪推してしまうこの頃。エンディングも全くハッピーエンドに見えないw(クリア後TIPSに関らず)
 たぶん「過去に囚われず現在と未来を大切にする」ってこと書きたかったんだと思うんだけど……終始部活メンバー(ってか圭一とレナ)は「日常」「仲間」と言う名の過去に囚われてました。日常は壊れるもの。壊れた日常は帰ってきません。壊れた事を認めた上で、新たに構築するしかないのですよ。そっから目を背けて「俺たち仲間だったんだから、また戻れるよ」ってのは笑い話にも程があります。原因から目を背けてる癖に超ポジティブ。何かに似てるとおもったら某種のAA……いやだあああ、あんなのと一緒だと思わせないでくれえええ。
 っていうか、全編通した「悟史」ってつくづく「部活の汚点」ですよね。みんなこれを必死で「無かった事」にしようと頑張るわけです。うんうん。鬼隠し冒頭で圭一が言ってたけど、「取り返しのつかない過ちなんてない。あったとしても、取り返しがつかないんだから尚更気にしたって仕方ないじゃないか」って論理は正しいですよ。取り返しがつかないものならね。悟史って「取り返しのつかないもの認定」されてるんだ(笑 悟史の失敗を生かして次は全力で助けるってーのはオッケーですが、それと一緒に少しは悟史のことを思い出してあげてください(´ω`) もし万一帰ってきたら「僕の時は助けてくれなかったのに」って言われても仕方ないです。後々一杯反省したり、探そうと努力してれば「そんな事無いよ、遅すぎるかもしれないけど、いなくなってから一杯探した! 反省した!」って言えるんですけどね。帰って来ないだろうって見解で一致してるみたいだから問題ないのかもしれませんが(謎過ぎる……) 多分罪滅し中間の罪の認め合いシーンは、詩音が聞いたらブチキレぐぎゃぎゃモンですね。「お前等で許しあう前に、悟史くんに謝りに行け!」って。ってかその後で梨花言っとるやん。「ボクたちにその事を話されても、ボクたちに圭一を許す事はできないのです。当事者でないと許す事ができないのですよ」と。当事者死んでたら他人に頼るのはオッケーですが、まるで死んだものの様に扱われる悟史( ´・ω・)テラカワイソス
 最初っから悟史はそんな大事に思われてなかったとは考えた方が自然かもですな。部活メンバーの絆が強固なものになったのは圭一の活躍が大きいだろうし。


魅音
 とことん善性キャラとして描かれてますなあ。目先のレナに惑わされてる&目を覚ましてくれたのは魅音って状況だから仕方ないとは言え、圭一、魅音にも多少疑念いだけよw 「秘密の隠し場☆」ってすごい単語ですYO?


結局何の解だったの?
 「仲間に隠し事するな」→「そんな事無いよ」ってことだと認識。もうちょっと大きく言えば、「仲間は無条件に仲間たりえるか」→「否、仲間だから障害が乗り越えられるのではない。仲間だから乗り越えなければならないのである」って感じ。
 鬼隠し含め、他編で語られてきた部員の確執が、一応の解決をもったというのが感動的ですね。上で散々突っ込みましたけど、すれ違い続きを見てきた分、全員が心を通わせあったのが嬉しかったです。多少消化不良を感じてはいますがね。私が贅沢すぎなだけでしょう。


 ここからは一応ミステリ部分にも触れておきます。


監督の謎
 ミステリ部に突っ込みいれないと言いましたが、ここだけ腑に落ちないので。ええと、レナたちが監督呼んだ理由って「治療のため」になってましたよね。監督=医者って前提条件は、鬼隠しプレイだけじゃあ絶対に分からないはずなんですけど……まだ「野球チームに勧誘するため」とかのが納得いったかなぁ。それとも鬼隠しで監督が医者であるのを示すワードってありましたっけ。そもそも正答率1%の謎には、監督の正体が含まれていないのかな?(監督≠現場監督であるという説自体は充分成り立つので、来訪理由はなんでもいい)

詩音
 出番が少なかった上に明るい場面しかなかったんですけどー……本当に輿宮でじっとしていたのかしら。今の所詩音がアクションを起こすのに関係するフラグは二つ判明しています。ひとつはぬいぐるみ事件。これの発生によりぐぎゃぎゃモードへ。もうひとつは綿流し前の電話。これが発生すると悟史との約束を思い出し、選択肢の向こうを目指し始めるそうです。
 どっちも発生していないと、のんびりまったり傷を癒すモードになるんですかねえ。鬼隠しにも詩音は登場しなかったわけだし。……悟史を思い出すと事件に巻き込まれる詩音。やっぱりこの作品において悟史は疫びょ(ry

魅音
 善性キャラとして描かれてますが、詩音があれなんで今ひとつ信用できない自分。でも今回の動きを見ていてちょっと思ったのは……鬼隠しでは魅音、圭一を確保しようとしなかったのかねぇ。大石ぶっ殺す発言が出るくらいだから、レナ時と同じように緊急確保体制になりそうなもんだけど。それがダムで出会った二人組って事は無いかしら。で、罪滅し圭一=鬼隠しレナと考えると、圭一と同じように「園崎に追いかけさせて不安にさせるのはマズイ」と思い立っても不思議じゃ有りません。圭一気絶後にレナがやってきて、二人組に圭一を任せて欲しい+魅音を呼んでくれと依頼するとか。あれ、それとも二人組って白衣だったんだっけ(よく覚えてない