真・女神転生III-NOCTURNE マニアクス:その12


 マガツヒが絶え間なく流れる貯蔵庫を、ひたすらに駆ける。中枢部への鍵、キーラを求めて。


 ……ヒジリに頼ったのは正解だった。俺達が中枢部だと思っていた部屋が巧妙に偽装されたダミーであると、あいつは見抜いていた。マントラの兵士達はニヒロ機構を完全に掌握したと思い込んでいるが、それすらも氷川の筋書き通りだったのだ。総司令や巫女が身をおく本当の中枢は、別に存在する。そういえばオニの一人が「中枢に入るにはキーラを手に入れなければ云々」と言っていた。かくして今俺は、中枢への道を開くため「キーラ」を探しているのだった。
 ヒジリはと言うと、途中で起こった大きな地響に身の危険を感じたらしい。「俺はこれ以上無理のようだ」と言い残して、そのまま立ち去ってしまった。……そんなところだけ人間じみているのはどうかと思う。シブヤの時も同じこと言っていた記憶があるが、しっかりこんな所まで潜り込んでるじゃないかと。


 さて、ニヒロの悪魔を数体撃破し、三本のキーラを台座に納める事に成功する。残り一本を同じように嵌め込めば、道が開けるはずだ。が、困ったことに残った一本を変な悪魔に持ち逃げされてしまった。犯人は巨大な人面ヒトデの様なバケモノで、夜魔キウンと名乗るキモイ奴だ。貯蔵庫のパズルを解いている最中にスイッチを勝手に動かすわ、大事なキーラを盗んでとんずらするわ、ロクな事をしない。ニヒロの悪魔は搦め手が得意だとは聞いているが、これは搦め手というより只の嫌がらせだと思う。あんまり頭良さそうな顔してないしな、アイツ。見つけたらあのデカイ顔面をサンドバッグにしてやる。


ディース「ウツダ様、相手をなめてかかる前に我が振りを直した方がよろしいかと。
     まさかガイアを装着したままキウンと一戦交えるつもりではありませんわね?
     き奴めは強力な呪殺の使い手でしてよ?」


 図星。


アラハバキ「哀れであることよ。
      我はその点、物理・破魔・呪殺、全てに耐性があるからして、
      些細な悩みとは無縁也」


 お前はその他全部弱点だろうが!……と突っ込みたいのはやまやまだが、物理無効の奴には実力行使は無意味である。くっ、これがボケ殺しと言う奴か。耐性:突っ込み無効。ヤバイ、強すぎる。
 しかしどうしてもガイアは外さないとダメだろうか。力がMAXの状態で気合いの乗ったカウンターを食らわすのが密かな楽しみなのに…… 第一、体力も魔力も全く育ててこなかった俺が魔法系のマガタマを装着したところで、覚えるスキルは片っ端から捨てるしかないのだ。ならば長所を生かしたマガタマで挑んだ方が──


ディース「わたくしの魔力は、テトラジャの為だけにあるのではありませんのに!
     いいでしょう、そんなにテトラジャを唱えて欲しいならば攻撃魔法なんて不要ですわね?
     そーれ、アギラオを二分の魔脈に変えてあげましてよ、ホホホホホ!!!!」


 うわあああぁぁぁぁ、なんて事を!! 数少ない攻撃魔法の使い手がまた一人減ってしまった。鬱だ。ディースの意図に反してますます肉弾戦に偏るパーティー。……火力が減って長期戦が見込まれる。泣く泣く俺はガイアをワダツミに付け替えるのだった。


 〜キウンの部屋〜


 キウンの後姿はこちらに向かっていたはずだが……目の前には廊下の左右に並ぶ、丸い扉。わざわざ袋小路に逃げ込む様には思えないが、先ほどまで閉まっていた鍵が全開になっているのが怪しい。つまりヤツはここのどこかに潜み、何らかの罠を張って俺を待ち構えているのだ。
 とはいえ、それに対抗する策など当然ない。ひとつひとつ中身を確かめていくことにしよう。まずは手前から順番に……


 いた。最初の部屋から思いっきりいた。
 よし、そこに直れヒトデ男。キーラを返せば逃がしてやらない事もないぞ。


キウン「残念だったな。俺はキウンだが、キーラを持ってるのは別のヤツだ」


 ──そんな言い訳が通用するか。有無を言わさず4人がかりでボコにする。しかし残念ながら、こいつはキーラを落とさなかった。
 むう、この様子だと他の部屋にも一体ずつ待ち構えていそうだな……ますます嫌がらせとしか思えない。全員ぶちのめして死ぬほど後悔させてやろうか。そんなことを思いながら隣の扉を開く。


 何か……三体いる。


キウン「俺が本物だ」


 そ、そうか。それは良かった。次の部屋に移るたびにどんどん増えていったらどうしようか、本気で悩みかけたぞ。
 しかし呪殺持ち三体はなかなかに厄介な相手だ。テトラジャ担当のディース、スタメンのキクリヒメ&アラハバキを召喚して立ち向かう。序盤、アラハバキには機をうかがうのに専念させ、テトラジャ・タルカジャ・ラクンダを念入りにかけていく。ムドはかなりの脅威だが、アラハバキの呪殺無効とテトラジャの効果で危機をしのぐ。補助魔法がかかり終わってからは早い。俺とアラハバキが突撃を開始すると、ものの数秒でキウンどもは敗れ去った。数が多くても、一体一体の耐久度が低い限り俺達の相手じゃない。反省しながら眠ってろ。


 よし、今度はきちんとキーラを入手できた。随分と時間を食ったな……急いで台座の間へ戻らないと(続)