追悼・アングスタ


「あいつ、どんな名前だったっけ?」


 去年の暮れあたりだったか、SONEくんGMブレカナをやったんだ。身内でキャンペーンやってるものらしく、前からハンドアウトだけ見せてもらっていて「うへー! なんだこの超面白そうなのは! 俺にもやらせろよ! 絶対PC1な! 他のヤツにやらせるもんかい!!」とか散々言いまくって、ようやくプレイに漕ぎ着けたセッションは予想通り、いや、予想以上に面白かったわけで。
 なかでも、PC1の因縁相手であるNPCが印象深かった。なんつーか、愛せるヤツっているもんだよ、うん。たった一回のセッションだけど、他の卓でもきっとこいつは愛されまくりなんだろーと思うと、なおさらいとおしいヤツだった。
 唐突にそのセッションを思い出したのは昨日の朝。好きな音楽を聴きながらシナリオの流れを頭の中で追っていたのだが──どーしてもNPCの名前が思い出せない。おかしいなぁ。あんなに気に入ってたんだけど。一度考え出すと頭から離れない。そもそも思い出したの自体突然で、これはイヤホンから「歴史は改竄を許さないのです」を延々垂れ流させてたのが原因だろうか。ブレカナっぽく思えなくもないし。
 ようやっと彼の名前が「アングスタ」だったことを思い出し、ひと心地ついたころ。携帯がなった。番号はSONEくんだ。ま、フツーに出ましたら、彼はこんなことを言うのですよ。


「なー、前やったブレカナでさー」
「アングスタってヤツがいたのを覚えてるか?」
「今日、例のキャンペーンでGMやってきたワケなんだが」
「ヤツをヌッコロしてきたよ」
「あれだな、長い間キャンペーンやったあとに死ぬと、感慨深いものだなぁ」


 ……ふむ、虫の知らせってヤツだったんだな。私の本日のアレソレを語ると、SONE君も大層びっくりしておった。さてさてアングスタくんは、話に聞く限りかなり燃え燃えな逝き方をしたらしい。珍しくSONE君がNPCのことをじっくり語っている。きっと向こうのPC1さんもさぞ熱くなったことだろう。しかしあれです。黙って逝く前に、たった一度セッションやっただけの私に思い出されてくれるなんて、やっぱりイイ奴じゃないですか、アングスタよ。──追悼。君の来世に幸有れ!